今年3本目のアルパイン。秋晴れのなか、明星P6へ。
メンバーは純さん、マタギさん、まつおさんの4人。まつおさんとは3年前の錫杖以来、純さんとも1年半ぶりの本ちゃん。
10/27
21:00相模大野発。この時点の天気予報では、土曜日は天気がもつものの、日曜日には曇り時々雨とのこと。明星は石灰岩で濡れるとよく滑るので、壁が濡れたら絶望的だ。
当初、土曜日は寝不足なので4人で左フェースにて足慣らし、日曜日はそれぞれの本命であるマニフェスト(純さん-まつおさん)、左岩稜(マタギさん-たけのうち)の予定でしたが、天気が良いうちに、本命に登ってしまおうとのことで、土日の行程を入れ替えることに。2:00展望台着。暗闇の中にうっすら三角形の岩壁が見える。2:30就寝。
<明星P6南壁。中央のリッジが左岩稜>
10/28 左岩稜
6:00起床。6:40取り付き着。左岩稜先行パーティーは2組、1組目は3P目、2組目は1P目をそれぞれをリード中。2組目は左フェースに行く予定だそうなので、それほど待つこともなさそうな感じだったのだが、実は甘かった。2組目のパーティ(N大)のフォローがV級の部分で1時間立ち往生・・・A0をするわけでもない。そのパーティは結局1P目で懸垂下降して敗退。1P目がこんな感じではさすがに左フェースといえども辛いだろう。クライミングの技術的にはきっと問題ないのだろうが、本ちゃん特有の状況判断をもっと教育すべきと思う。
先行パーティを待っていると、純さんが左岩稜取り付きへ。車の中にクライミングシューズを忘れたので取りに帰るとのこと。これが谷川だったら面倒なことに(笑)・・純さんに鍵を預けるがこれが後々行動を左右することになろうとは、この時点では予想できなかった。7:40登攀開始。
<登攀前の図>
1P目(たけのうち) ブッシュを抜けて先行パーティが立ち往生した壁を越え、右に回り込んでビレイ点。
2P目(マタギさん) ビレイ点右の凹角を登り、正面の垂壁の左手が左岩稜のビレイ点。右手にもペツルのハンガーがあるが、これは左フェース用。
3P目(たけのうち) たぶん核心部。リングボルトのすぐ左に立派なペツルのハンガーが打ってある。数カ所最上段に乗らなければならないところがあるだけで技術的には特に問題はない。ただ腕力を消費してしまうので、フリーの部分がちと辛い。後続のマタギさんも難なくクリア。
我々もかなり調子の良いスピードで抜けたのだが、後続のパーティがさらにすごい勢いで近づいてくる。フォローへの声かけの仕方からしてガイドの方らしい(後でJAGUの木村さんと判明)。
<3P目を人工登攀でフォローするマタギさん。年季の入った余裕の登り>
4P目(マタギさん) へこんだスラブを登る。途中の残置シュリンゲは迷わず利用してテラスまで。
5P目(たけのうち) テラスから直上しようとするが途中で行き詰まる。ルートを間違えたようだ。クライムダウンしてビレイ点に戻り、トポを確認するが、自分たちの現在位置が「失神テラス」か「松の木テラス」かが微妙。失神テラスは脆いテラスとの情報、松の木テラスは松の木があるのだろう。という目で見てみるが、足元は脆く松の木もある。マタギさんは左のルートを主張(つまり現在位置は松の木テラス)、たけのうちは失神テラスだと信じて右の凹角を主張、結局リードの僕の判断で右に行った。
凹角を登り切るとハングにぶつかる。左を回り込むことが出来そうだが、岩には干からびたコケが付着していて何か違和感を感じたが、今更戻れないので気合いで抜け、抜けきったところの枯れ木でビレイ。ハングの下はかなり微妙なスラブでノーピン。後続のまたぎさんも「よくこんなところリードしたね」との弁。ハングにクラックが走っているのでカムがあればと後悔。(実はこのルート、後日ハルシオンの5P目(V-)と判明。どおりで難しかったわけだ・・)
6P目~10P目 後続のガイドパーティは3人を引き上げるためか、追い上げてくる気配は無い。灌木でビレイできるので、適当にピッチを切っていく(ピンは全く無い)。特に脆い草付きの岩場を、のんびりと日本式崖登りスタイルで4P登ると大岩に到着。大岩でN大の別のパーティに出会う。全部で3パーティ(左フェース2パーティ、直上ルート1パーティ)取り付いたらしい。
<上部はずっとこんな草付き混じり>
11P目(たけのうち) 残る凹角左のリッジを1P登ったところが下降点。12:30に握手。5P目で迷ったことで時間が多めにかかってしまったが、その他は予定していた時間通り。下降点で1時間半ほどまったりと昼食タイム。
純さん&まつおさんパーティは、ロングルートなので先に下降開始。付けたばかりの赤テープに導かれて30分ほどで小滝川までおりられる。駐車場まで15分程登り返して、15:15ギャラリーの観光客&パトロール中(?)のお巡りさんに拍手で迎えられ駐車場着。
先に食事の準備をしておきたいところだが、車の鍵を純さんに預けてしまったので車に入れない。なんてこったい。隣のテントでテントキーパーをしている女性(モンベルで仕事をされているそう)にお茶をごちそうになり、話をしながらひたすら待つ。彼女の相方はクワトロを登っているらしい。ビバークの可能性もあるとのこと。
16:30マニフェスト組帰還。マタギさんのメンチカツ丼をごちそうになりながらビールで乾杯。海の幸たっぷりの豪勢な食事が用意されている隣のテントは、まだ帰還しないらしい。18:00頃に大岩付近でヘッデンがちらついていたので、きっとビバークだろう。みんな疲れているのか、思ったより酒が進まず、19:00就寝。(隣のテントのパーティは22:00頃に無理矢理帰還したらしい・・)
10/29 左フェース
5:00起床。6:40取り付き。未明こそ厚い雲がたれ込めていたが、日の出の頃には雲はすっかり消えていた。バットレス&谷川に引き続き、マタギさんと行く山行はことごとくクライミング日和で怖いくらいだ。昨日左膝を痛めた(脱臼)こともあって膝が多少ガクガクするのが少し不安だが、ほとんどIII級のピッチなので、何とか行けると判断した。
我々の起床前から未明から取り付いた気合い十分の3人パーティ、JAGUの篠原さんの4人パーティの2パーティが取り付いており、我々は取り付き3番目。先行2パーティはともに左岩稜なので、左フェースでは我々がトップ。ラッキー。左フェースは、2P目までは左岩稜と共通。3P目からひたすら右上し、途中で左に折り返して、左岩稜の実質上の終了点である大岩に至る「く」の字型ルート。
1P目(純さん) 我々が取り付いたときには、最先行の気合いパーティは、まだ3P目の人工のルートをリード中。「少し遅いんでないの?」と後続パーティーは大ブーイング。
Vの立った壁の部分、昨日は左に回り込むルートを取ったが今日は正面突破。思い切りが必要だが、見た目ほどには難しくない。
2P目(たけのうち) 1P目のビレイ点も大渋滞。我々は左フェースなので、2P目は、2番目のパーティに断った上で、裏道ルート(正式ルートの右の凹角ではなく、リッジの左から上に登った後に、右へトラバースする渋滞回避用ルート)から、先行パーティのロープをくぐって左フェースビレイ点へ。ピッチグレード的にはV-程度か。
3P目(純さん) 右上する顕著な凹角を辿りピナクルへ
4P目(たけのうち) クライムダウンポイントまで階段状のフェースを辿る。このピッチ楽勝のはずなのだが、膝の痛みが出てきて、かばいながらのリードなので左足での立ち込みが出来ず、精神的にはかなり苦戦。
5P目(純さん) クライムダウンのピッチ。フォローのたけのうちは軟弱にロアーダウン。
6P目(たけのうち) わかりやすいランペを右上、上部は灌木の木登り。
<6P目ビレイ点からの光景。この高度感、写真では伝わらないよね・・・>
7P目(純さん) ひたすら右上・・と思いきや、ハーケンが全然無いということで純さんが戻ってくる。その後ビレイ直右あたりを直上。トポでは次のピッチで右上から左上に折り返すはず。違うなぁ・・と思いながらもどこかでピッチを切らずに来たのかもしれない。支点はあるとのことなので、間違っていてもどこかのルートなのだろう。
このルートは今から思うと直上ルートではないかと考えている。過去の記録を読むと直上ルートから左フェースに入ったパーティもいるようだ。どこを登ってもIII級程度の草付き帯なので、残置ハーケンというヒント無しのルートファインディングは岩との対話が必要、アルパインの楽しい部分の一つだと思う。
8P目~11P目(純さん) 偶数ピッチはたけのうちリードのはずだが、膝痛でフォローのスピードも落ちてきたので、8P目と10P目のリードを変わってもらい、さながらガイド状態(苦笑)。純さんに感謝! ルート自体はIII~IV級で、ひたすらブッシュ&ブッシュですっきりしない。支点は灌木かカムでとるしかない。明星は石灰岩でクラックが多いので、カムがあるととても便利。冬のボーナスで揃えたいなぁ・・・
12P目(たけのうち) 大岩に至る最後のピッチ(I~II級)。ガレガレ。
13P目(純さん) 下降ポイントに至るリッジ。左岩稜と共通。12:30着。
膝の怪我でメンバーに迷惑をかけないかが心配で、十分のめり込むことは出来なかったが、左岩稜に比べて難度も低い割には、様々な要素がコンパクトにまとまったルートで大満足。
帰路は姫川温泉のホテル朝日荘の岩風呂へ。強酸性の泉質のお湯は、ブッシュで傷ついた手足には相当きつく、痛いのか熱いのかわからなかった。帰りも350km、ひたすらドライブでしたが、助手席のマタギさんの話が面白く、居眠りすることもなく無事に帰還。快適クライミングで、11月に明星にクライマーが集まる理由を体感できた2日間でした。
感動をもって読みました。あの快晴の秋の明星。
この日誌を読むと、あの日の岩の感触が、この手に甦る。ナーンチャって。
でも、彼は実に丹念にルートや出来事をひろっている。この意味でクライマーらしいクライマーといえる。
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